幼児教育を考える~子育てワンポイントアドバイス~
  • 子育てワンポイントアドバイスについて

     大阪の私立小学校の校長先生に、
    『幼児教育を考える ~子育てワンポイントアドバイス~』というテーマで、エッセイをお願い致しました。

     記念すべき、第1回目は、箕面自由学園小学校の原誠治 元校長先生の『孫から学ぶ』を、
    第2回目は、追手門学院小学校の津田克彦 元校長先生の『ルーティーン』を、
    第3回目は、城南学園小学校の山北浩之校長先生の『何のために勉強するの?』を、
    第4回目は、大阪聖母学院小学校の赤野孝一 元校長先生の『息子をとおして学んだ「我が家」の大切さ』を、
    第5回目は、帝塚山学院小学校の文田雅夫 元校長先生の『その子はその子らしく』を、
    第6回目は、はつしば学園小学校の志磨和雄 元校長先生の『「安定根」の上にひろがりを』を、
    第7回目は、四條畷学園小学校の北田和之校長先生の『「できないこと」思考から「できること」思考へ』でした。

     そして、第8回目は、聖母被昇天学院小学校の坂本清美 元校長先生にお願い致しました。
    タイトルは、『親元を離れるときに』です。

    皆様、どうぞご覧下さい。

  • 【『賢い子・伸びる子どもに』 幼児教育を考える ~子育てワンポイントアドバイス~ 第8回目】

    『賢い子・伸びる子どもに』 幼児教育を考える~子育てワンポイントアドバイス~≪第8回目≫

    聖母被昇天学院小学校 坂本 清美 元校長先生


    『親元を離れるときに』

     最近、子育てについて、子が親元を離れるおりに、
    その親子の歩みが浮かび上がるものだと考えさせられる機会が度々あります。

     そのようなときには、子ども自身も幼いころに親にしてもらって嬉しかったことや、
    嫌だったことをふり返って思い出すようで、小さいときのことをよく覚えているものです。
    親が忘れてしまっていることも覚えていて、驚かされることがあります。

     娘が結婚するとき、息子が一人住まいをするとき、親にとっては心配することが
    できるだけ少ない方がいいですね。お料理ができる。住居の管理ができる。お金の管理ができる。
    そして、人間関係がうまく結べて、困ったときに相談できる友だちがいる。
    このように育っていれば、勉学や仕事もしっかりできるのではないかと思います。

     ある結婚式の披露宴で、新婦が自分のお母さんに「感謝の言葉」を贈りました。

     小学校の1・2年生のとき、仕事を持っていた彼女のお母さんは、小さなメモのような手紙とともに、
    計算や漢字の問題を書いて、机の上に置いていたそうです。
    そのことがとても嬉しかったようで、毎日、学校から帰って、メモを読み、
    問題をするのを楽しみにしていたそうです。

     夏休みには、宿題をするために一緒に図書館に行ってくれたり、ピアノの練習をするとき、
    横に黙って座っていてくれたりしたことを感謝していました。
    料理なども細かいことまで色々教えてくれ、家庭科の先生に褒められたということでした。

     テレビを観る時間を制限し、社会人になったときには、お弁当を自分で作らせたことなど、
    厳しい母親であることを恨んだ時期もあったようですが、この日を迎えて苦労なく料理ができ、
    あまりテレビを観ない新郎と気が合うことなど、今になって思うと有り難かったということでした。

     そして、新郎とは、子どものころ観ていたテレビ番組が同じで、テレビを観る制限時間についても同じ。
    この出会いは、お母様達のお陰?と思ったのは、私だけでしょうか。
    きっと、この二人にとっては、子育ての方針もあわせやすいことでしょう。
    末永く共に生きていけそうに思えます。

     あらためて、日頃の生活習慣の大切さを痛感しました。
    子どもが嬉しいと感じることは、子どもと一緒に何かをすることであり、
    子どものために親が自分の時間と労力を使うことなのですね。
    それは、決して簡単なことではないけれど、子どもが成人してからでは
    もうその日々を取り戻すことはできないのです。




    ☆『賢い子・伸びる子どもに』 幼児教育を考える~子育てワンポイントアドバイス~に関しまして、 ご意見、ご質問等がございましたら、「大阪プレイスクール 山口」 までお問い合わせ下さい。  


    ★聖母被昇天学院小学校ホームページ
    http://www.assumption.ed.jp/

【『賢い子・伸びる子どもに』 幼児教育を考える ~子育てワンポイントアドバイス~ 第7回目】

『賢い子・伸びる子どもに』 幼児教育を考える~子育てワンポイントアドバイス~ ≪第7回目≫

四條畷学園小学校 北田 和之 校長先生


『「できないこと」思考から「できること」思考へ』

 「ひらがなが苦手なので毎日ひらがなをいっぱい書かせています。」
 「引き算ができないので計算ドリルを買ってきました。毎日5分ずつ取り組ませます。」
 「水を怖がります。泳げないと命にかかわるので、スイミングへ行かせます。」
  「本を読まないので、毎日20分間声に出して読む練習をさせています。」

 親は子どもに、なんとか苦手なことを克服させたいと考えるものです。
それは自然にわき起こる気持ちであり、親子の関係を緊密にしていくためには
とても大切な手だてのひとつでもあります。

 ただ、お子様に手をさしのべる時、気をつけていただきたいことが三つあります。

 ひとつは、複数の課題を一度に与えるのではなく、お子様にとって一番取っつきやすく、
大切なことからひとつずつ取り組ませるということ。

 もうひとつは、そういった課題にお子様が主体的に取り組んでいるかどうかをよく観察し、
臨機応変に次の手だてを考えることです。

 大人は、子どもの苦手なことを
「これは国語の分野」「これは音楽の分野」というふうに分野ごとに分けて考えます。
でも、子どもにとっては、「たのしいかどうか」や「がんばれるかどうか」という大きなくくりがあるだけで、
根っこの部分はつながっているものです。

 そのため、子どもの課題への取り組みを慎重に見極めることを怠ると、ひとつの挫折が、
これまで楽しんでいたはずの全く違う分野にまで悪影響を与える場合もあります。

 むりやり国語のドリルを続けさせているうちに、それまで楽しんでいた歌が嫌いになったり、
お絵かきを嫌がるようになったりする例を、これまで私はいくつも見聞きしてきました。

 子どもの取り組みが主体的であるかどうかを見極めるのは、容易ではありません。
喜んで取り組んでいる間は褒めて励ませばよいのですが、難しいのは子どもが反復に飽きたり、
苦痛を感じ始めたりした時の見極めです。

 少し苦しいけれど、自分でもうひとがんばりしようという意欲がある場合があります。
また、意欲がなくなってきているけれど、親の励ましがあればもうひとがんばりできそうなこともあります。
こんな時は、親の腕の見せ所ですね。
 
 けれども、ひょっとすると、もう我慢の限界を超えているかもしれません。
そんな時は、すっぱりと見切りをつけて、子どもをストレスから解放し、
再び本人のやる気が高まってくるのを待つ方が得策かもしれません。

 いずれにせよ、子ども自身で物事を考えていく、
または、伸びていこうとする気持ちを大切にしてあげてほしいと思います。

先ほど述べたように、子どもにとって、
勉強や遊びが細かな分野に分かれていないことを逆手にとった方法もあります。

 それは、「子どものやりたいことや子どものよいところを見付けてやり、
それを伸ばすだけ伸ばしてあげる」という方法です。

 これがうまくいくと、苦手だった全然別の分野が伸びていくことがあります。
出来ないことや分からないことを考えるよりもプラス思考なので、
親にとっても子どもにとっても気分的にも楽かもしれません。

 私が担任をしていた頃の話です。絵の具を使って絵を描くのが苦手で、
美術の時間を嫌っていた子がいました。
ただ、その子は鉛筆だけで絵を描くのは好きだったので、
暇があればクロッキー帳に鉛筆画を描いていました。

 ある時、その子の絵を見た友だちの一人が、
「うまいなあ、もっと見せて見せて。」
と賞賛しました。

 それをきっかけに、他の子どもたちも彼の絵を認めて、
「ぼくにも描いて。」
と頼むようになりました。

 楽しみで描いていた鉛筆画が、知らないうちにみんなにも認められるぐらいの腕前になっていたのです。
この子はこうした友だちの言葉がきっかけで、絵に自信を持てるようになり、美術が好きになりました。
不思議なことに、同じ頃から算数や国語といった他の教科にも急に興味を持つようになり、
成績がグングン伸びていったのです。
ひとつの自信がテコとなって、ほかの能力を引き延ばした好例といえるでしょう。

子どもの手助けをする時に気をつけていただきたいことの三つ目は、その力を身につけさせることが、
子どもにとって本当に楽しく幸せになるものかどうかをしっかりと考えていただきたい、ということです。

 他の子がこれぐらいできているのだから、うちの子も同じぐらいできなければならない、
と考えるのではなくて、お子様の個性を認め、その子なりの目標と方法を見つけ出してあげてほしいのです。
 
何でもできることはいいことだとは思いますが、
だからといって全てが完璧でなければならないとは、決して思いません。

 これができる子。あれが得意な子。これはすごく上手だけれど、こんなことがまだ苦手な子。
得意な分野がそれぞれ異なっているのが人間です。
いろいろな個性の子どもたちがいる集団だからこそ、その中にいる子ども達は影響し合って、
どんどん伸びていくのです。

 出来ないことを気にするより、これができるんだという自信を、
お子様に持たせてあげることを心がけていただきたいと考えています。
 



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ご意見、ご質問等がございましたら、「大阪プレイスクール 山口」 までお問い合わせ下さい。  



★四條畷学園小学校ホームページ
http://www.shijonawate-gakuen.ac.jp/